ドライアイ
涙は眼の表面を潤して乾燥から守り、酸素や栄養素をすみずみまで届け、小さなゴミなど異物や老廃物を洗い流す役割を担っています。涙の量の不足や涙の質のバランスが崩れていることで、この働きが悪くなるとドライアイを生じます。涙は蒸発しやすく、眼表面の涙が不足すると細胞を傷付けてしまいます。涙はまばたきによって分泌が促されます。まばたきは涙を均等に行きわたらせるためにとても大切です。まばたきの回数が減ることもドライアイの原因になります。加齢によって涙の量や質は変化します。高齢者のドライアイは以前から多かったのですが、近年ではパソコン・スマートフォン、コンタクトレンズの使用が増えたことで、子どもを含めた幅広い年代に発症が増えています。
日本でのドライアイ患者数は2,200万人に及ぶといわれています。
ドライアイの症状
- 眼が乾く
- 眼が疲れやすくなった
- 眼に痛みや痒みがある
- 眼がゴロゴロする、異物感がある
- 眼ヤニが増える
- 眼に不快感がある
- 訳もなく涙が出る
- 充血しやすい
- 光がまぶしい
- 眼がなんとなく重い
- 物がはっきり見えないことがある
- 視界がかすむことがある
ドライアイの治療
点眼治療:点眼薬によって眼の表面に涙や目薬が長く保てるようして表面の傷修復も促します。
①ヒアルロン酸点眼薬
粘弾性と保水性があり、眼球表面の摩擦を軽減させ、角膜上皮の再生を促す作用があります。ドライアイに対して最も多く使用されている点眼薬です。
②ジクアホソルナトリウム点眼薬
ムチンや水分を分泌促進し、涙の状態を改善します。ムチンは角結膜上皮の障害を改善し、涙の質を保つために重要な成分です。
③レバミピド点眼薬
ムチン分泌を促進することで涙の状態を改善し、角結膜上皮の障害を治療します。白い水性懸濁液であり、点眼後一時的に見えづらさがあることと、独特の苦味があります。
涙点プラグ
点眼薬で症状に改善がない場合には、プラグで涙の排出口を閉じる治療です。プラグで涙の排出口を閉じ、眼の表面に涙をためることで症状を改善させます。治療に要する時間は5分程度です。
ドライアイの対策
まばたきの回数を意識的に増やすようにしましょう。人間は集中した際にまばたきの回数が大幅に減ってしまうため、パソコンやスマートフォンを使っている時には特にまばたきを増やすよう心がけてください。また、エアコンは室内の空気を乾燥させてドライアイの症状を起こしやすくします。エアコンの風が直接当たらないようにする、加湿器を設置するなどで対策をしてください。
市販の目薬の中には血管収縮剤や防腐剤と呼ばれる成分を含んでいるものがあります。これらの成分は頻繁に使用するとドライアイを悪化させる場合がありますので、血管収縮剤や防腐剤を含まないタイプの目薬を選びましょう。
眼精疲労とVDT症候群
眼精疲労とは眼の疲れやかすみ、痛み、まぶしさ、充血、それに付随する頭痛、肩こり、吐き気、めまいなどの症状です。
スマートフォン、タブレット、パソコンの長時間利用が一般的になって、眼精疲労を訴える方が増えてきています。
VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群とは、パソコンやスマートフォンなどのディスプレイ画面を長時間みる作業が原因となって、眼・身体・心に症状を起こす疾患で、 “IT眼症” と呼ばれることもあります。眼精疲労と同様にとさまざまな症状を現します。
眼精疲労の対策と治療
原因をできるだけ排除することが重要です。
生活習慣を見直すだけでも改善につながることがあります。
日常生活の中での眼精疲労の対策
- パソコン、スマートフォン、タブレットなどを使用する際には、1時間毎に5分程度の休憩を入れるよう心がけてください。デスクワークの場合にはデスクや椅子の高さ、ディスプレイの角度など設定の見直しも効果的です。こまめに立ち上がって身体を動かすといったことも重要です。
- 眼鏡やコンタクトレンズが用途に合っていない場合には、作業に合わせて適切な眼鏡、コンタクトレンズを作り直しましょう。
- ドライアイの対策も重要です。こまめな瞬きを心がけましょう。ドライアイの点眼液、眼の疲れを緩和させるビタミンが配合された点眼薬など、必要に応じて使用しましょう。
- 睡眠をよくとりましょう。
- 温罨法・冷罨法もおすすめです。温罨法(おんあんぽう)は、眼の周りを温めることで、血管が拡張し、血行が促進されます。また冷罨法(れいあんぽう)は、逆に眼の周りを冷やすことで血管を収縮させますが、その後に血液の循環が良くなります。
コンタクトレンズトラブル
コンタクトレンズがはずれない
眼に張り付いて取れない時、無理に剥がすと眼を傷付けてしまう場合があります。レンズの上からできる目薬で目を潤してから外してみてください。うまく外れなければ、洗面器の水の中でまばたきすると外れる場合があります。それでも外れない場合は眼科を受診しましょう。
コンタクトレンズが眼の中で行方不明になった
鏡を見ながら眼を上下左右に動かして、コンタクトレンズを探しましょう。レンズが眼の内側や裏側に入り込んでしまうことはありません。見つからなければ、レンズを落とした可能性もあります。レンズが見つからない場合は、レンズどこかに残っている可能性も考えて、念のため眼科受診をおすすめします。
カラーコンタクトレンズのトラブル
ファッションとして人気のカラーコンタクトレンズ(カラコン)ですが、量販店の雑貨売り場やインターネットで購入できるものには酸素透過性の低い素材で作られ、安全性に問題のある製品があり、眼に重篤な障害を起こす場合があります。また、眼科を受診することなく購入できるため、正しい使用方法を学ぶ機会のないまま使用している方が多く、トラブルの原因になる場合があります。異常を感じた時には眼科を受診しましょう。
涙道の病気
涙は眼の表面を潤して乾燥から守り、角膜や結膜に酸素や栄養素を届け、小さなゴミなどの異物や老廃物を洗い流す役割を担っています。涙は涙腺で作られて、眼の表面を潤した後、目頭にある涙点という穴から涙小管、涙嚢、鼻涙管を通って鼻の奥に流れます。涙が排出される経路を涙道と呼びます。
流涙症
涙目とも呼ばれ、訳もなく涙がこぼれる、涙で視界がぼやけるなど涙が溢れている状態です。涙道に問題が起こると涙が溢れます。涙道のトラブル以外で涙が増える病気には、結膜炎や逆さまつ毛などがあります。時にドライアイが流涙症を引き起こすこともあります。
涙道閉塞
涙道のトラブルには涙点閉鎖、涙小管狭窄または閉塞、涙小管炎、涙嚢炎、鼻涙管狭窄または閉塞等の病気があり、流涙の他に目ヤニ、痛み、腫れを伴う場合もあります。手術を含む高度な治療が必要な場合は提携の高度医療機関をご紹介させていただきます。
先天性鼻涙管閉塞
生後すぐからの流涙の場合、先天性鼻涙管閉塞の可能性があります。自然に治る場合が多く1歳までに90%、2歳までに95%が自然治癒すると言われています。自然に治らない場合は提携の高度医療機関をご紹介させていただきます。
結膜の病気
感染による結膜炎
細菌やウイルスなどに感染して涙、目ヤニ、充血、発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れを伴う場合もあります。感染者の目ヤニを介して感染が広がる可能性があります。
細菌性の結膜炎
黄色ブドウ球菌や肺炎球菌などが原因となります。抗生物質の点眼薬が有効です。適切な治療を受ければ、1~2週間で治癒します。
はやり眼
ウイルス性の結膜炎です。原因のほとんどがアデノウイルスで感染力が強く、人から人への感染を起こします。アデノウイルスは子どもの風邪の原因としても多く、流行性角結膜炎と言われます。アデノウイルスに有効な治療薬はなく、抗炎症点眼薬、細菌感染の合併を予防する意味で抗生物質の点眼薬を用います。治癒まで2週間から1ヶ月程度かかります。
はやり眼の感染を広げないために
- 手をこまめに洗うようにしてください
- タオルは共用しないでください
- お風呂は最後に入るかあるいはシャワーですませてください
はやり眼の出席停止について
子どもがはやり眼に感染した場合、登校を控える必要があります。
学校保健法で「完全に治るまで登校禁止」とされています。登校には医師の許可が必要で、登校許可証明書(登園許可証明書)の記入を受けてからの登校登園となります。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、アレルギー反応を起こすアレルゲンが眼に触れて炎症を起こす病気です。眼のかゆみ、充血、目ヤニ、涙が多くなるなどの症状が出ます。特に症状の強い春季カタルという病態もあります。花粉などが原因で特定の季節だけに症状が現れる季節性と、季節に関係なく症状を起こす通年性に分けられます。通年性はダニやハウスダスト、ペット、特定の化学物質などによって起こります。
アレルギー性結膜炎の治療
アレルギー性結膜炎では、アレルギー反応を抑制する抗アレルギー薬の治療が基本になります。抗アレルギー点眼薬は副作用がほとんどなく、使用しやすい薬剤ですが、強い症状は抑えることができない場合があります。その際は効果の高いステロイド点眼薬を使用します。時に眼圧が上昇する副作用が出ることがあるため、定期的な眼圧チェックが必要です。眼圧上昇がみられた場合は点眼の中止や回数を減らす必要があります。また、コンタクトレンズの使用はできるだけ控える必要があります。使用する場合は一日使い捨てレンズを使用しましょう。
春季カタル
春季カタルは重症化したアレルギー性結膜炎で、特に小学生の男の子に多い傾向があります。症状は激しい目のかゆみと大量の白い糸状の目やにです。上まぶたの裏側にある結膜に石垣状乳頭増殖という隆起ができます。黒目と白目の境が腫れることもあります。角膜の潰瘍が起こるとかゆみだけでなく、強い痛みが現れ、眼を開けていることができなくなります。治療には、抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬、重症例には免疫抑制剤の点眼薬を用いる場合もあります。
花粉症
花粉症は花粉が原因で特定の季節だけに症状が現れる季節性のアレルギーです。シーズンの数週間前から抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などをスタートさせると、症状が大分緩和されます。
早めに眼科を受診することをお勧めします。
花粉の飛散時期
- スギ花粉(1~5月)
- ヒノキ花粉(3~5月)
- イネ科カモガヤ・ハルガヤ花粉(4~9月)
- キク科ブタクサ・ヨモギ花粉(8~10月)
- ブナ目ハンノキ・シラカンバ花粉(1~6月)
結膜下出血
結膜の血管が破れて結膜下に出血したものです。眼をこすったりぶつけたりした場合や、くしゃみや咳、強く鼻をかむなどで起こることもあります。思い浮かぶきっかけがない場合もあります。視力が低下することはありませんが、軽い痛みを伴う場合はあります。1~2週間で自然に吸収されることが多いですが、数ヶ月かかる場合もあります。吸収に時間がかかる場合、繰り返し出血する場合、痛みやかゆみを伴う場合には、他の病気の可能性もありますので、眼科受診をお勧めします。
結膜弛緩症
白眼の表面を覆っている結膜がたるんだ状態です。もともと結膜には眼球を上下左右に動かすために適度なたるみがありますが、過剰にたるみが生じると違和感やドライアイの原因となります。多くは、ドライアイの点眼薬が効果的ですが、点眼薬の効果がなく異物感が続く時は、手術を検討する場合もあります。その場合は提携の高度医療機関をご紹介します。
翼状片
白眼の表面を覆っている結膜が、目頭から黒目に向かって三角形に伸びていくのが翼状片です。充血や異物感があります。原因はよくわかっていませんが、紫外線が関与しているとの指摘もあります。悪性のものではなく、放置しても問題はありませんが、進行すると見え方に影響を及ぼします。充血やゴロゴロを解消するためには、点眼治療を行います。視力に影響がある場合は手術を検討しますので、提携の高度医療機関をご紹介します。
瞼裂斑
瞼裂斑とは角膜に隣接するようにして存在する黄白色の隆起性病変のことです。隆起が大きい場合はドライアイ症状が現れることがあり、その場合はドライアイ用の点眼薬を用います。炎症を起こした場合は瞼裂斑炎と呼び、充血やゴロゴロ感を伴いますので抗炎症剤の点眼を使用することがあります。
まぶたの病気
麦粒腫(ものもらい)
麦粒腫は、まぶたの縁にあって脂を分泌するマイボーム腺やまつげの根元に細菌が感染し、炎症を起こした状態です。まぶたの腫れ、かゆみ、まばたきの際の痛みといった症状があります。原因は皮膚や粘膜に常在している黄色ブドウ球菌などです。抗生物質、抗炎症剤で治療します。
霰粒腫
脂を分泌するするマイボーム腺がつまって、まぶたの中に分泌物がたまり、しこりのような塊ができる病気です。症状は、まぶたの腫れ、異物感で麦粒腫と似ています。しこりが小さい場合は、自然に治ることが多いですが、大きい場合は切開する場合もあります。通常、痛みや赤みがでることはありませんが、細菌に感染している場合は痛みを伴います。その場合は抗生物質や抗炎症剤で治療します。
眼瞼下垂
まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋が加齢などで弱くなり、まぶたがうまく上がらない状態です。額に深いシワができやすく、普段から険しい顔つきになります。頭痛や肩こりを伴う場合もあります。加齢の他、外傷、眼の手術、長年のハードコンタクトレンズ装用が原因となり得ます。また、先天的な場合もあります。基本的に治療は手術となります。上まぶたの皮膚を一部切開して行う方法、まぶたを持ち上げる筋肉を短くする方法など、状態に適した手術を行います。
手術をご希望の場合には提携する高度医療機関をご紹介いたします。
眼瞼下垂で、脳神経の病気が疑われる場合
- ある日突然まぶたが上がらなくなって、物がだぶって見える。
- 時々まぶたが上がらなくなり、休むと回復する。
- このような症状は早急に脳神経専門医をご紹介致します。
眼瞼けいれん
眼瞼けいれんは、まぶたの開け閉めを行う筋肉が何らかの原因でけいれんし、まばたきが思うようにできなくなり、自分の意志に反して目が閉じてしまう病気です。眼瞼けいれんは、脳の大脳基底核に関連した病気であると推定されています。初期症状は「まばたきが増える」「まぶしい」、「両眼を開けるのがつらい」「目が乾く」などです。症状が進行すると、両眼のまぶたが頻繁にけいれんし、自分ではまぶたを開けることが出来なくなることもあります。自分の意思とは関係なく急に目をつぶってしまうこともあるため、歩いていて人と衝突する、自転車や車の運転が難しくなるなど日常生活に支障がでることもあります。通常、こうした症状は両目に現れますが、左右差がある場合もあります。症状の進行は比較的緩やかですが、自然に治ることはありません。多くは40歳以上の女性が多く発症し、睡眠薬や抗不安薬などの内服があると発症年齢が早まると報告されています。正確な患者数は不明ですが、診断されていない方も含めると日本では30〜50万人以上ではないかと推測されています。
眼瞼ミオキミア
眼瞼けいれんと似た症状で、眼瞼ミオキミアという病気があります。まぶたの一部がぴくぴく動いたり、まぶたが開けにくくなったりする症状です。特徴はいつの間にかに起こり、いつの間にか治ります。目の疲れ、ドライアイ、ストレスなどで起こるといわれていますが、はっきりした原因は分かっていません。通常は片側だけに症状が現れます。
片側顔面けいれん
片側顔面けいれんは、顔の片側の筋肉が自分の意志とは関係なくけいれんを起こす病気です。眼瞼けいれんと似ていますが、片側顔面けいれんは左右どちらかだけに症状が現れます。脳内からの指令がうまく伝わらなくなって起こる異常と考えられています。中高年に多く見られ女性は男性の2~3倍、特に50~70歳代の女性に多く発症します。初期は、目のまわりがピクピクとけいれんするだけですが、そのけいれんが頻繁に起きるようになり、けいれんしている時間も長くなっていきます。やがて同じ側の額や頬、口のまわり、あごの下などにまでけいれんが広がります。けいれんは長時間続き、睡眠中にさえ現れるようになります。さらに重症化すると顔がゆがんで引きつったような表情になり、目を開けていられなくなることが増え、日常生活や対人関係にも大きな支障をきたすようになります。
けいれんの治療法
眼瞼けいれんや片側顔面けいれんには、根本的に治す方法がなく症状を和らげるための治療が中心になり、ボツリヌス療法が行われています。ボツリヌス療法は、ボツリヌス菌の作り出す神経毒素を主成分としたボトックス(製品名)という薬剤を緊張状態の筋肉に注射します。それによって筋肉を麻痺させてけいれんを抑え、症状を改善する治療です。ボツリヌス毒素は食中毒の原因になることで知られていますが、ごく少量であれば、けいれんを引き起こす神経を抑える効果を持っています。ボトックスは、シワを和らげる、エラの筋肉を細くするなど美容の治療にも長く使われてきています。厚生労働省の認可を受けた施設でのみ受けることができる治療法です。この治療による効果は通常2~3日後から現れ、その後2~4ヶ月程度持続します。高い確率で症状の改善が見られる治療法ですが、繰り返し注射を受ける必要があります。
逆さまつ毛
まつ毛は普通、眼球にあたらないように生えています。しかし、逆さまつ毛ではまつ毛が眼球の方へ向かって生えます。まつ毛が眼球にあたると、角膜の傷や炎症を作る場合があります。症状としてはゴロゴロといった眼の異物感や痛み、目ヤニ、涙目などです。逆さまつ毛は抜くことで一時的には解消できますが、再び生えてきて、症状を繰り返すことになります。逆さまつげを切ると、先がとがったまつ毛が伸びて角膜を傷つける場合があります。自己処理は注意が必要です。眼科を受診して正しい治療を受けましょう。
逆さまつ毛には、2種類あります。まつ毛が眼球に向かって生えるタイプと、まぶたの縁が眼球側へ向かうタイプです。まつ毛が眼球側に向かって生えてしまうタイプは睫毛内反と呼ばれ、まぶたの縁が眼球側へ向いてしまうタイプは眼瞼内反と呼ばれます。
睫毛内反
まつ毛の毛根周囲炎症のために、まつ毛の生える方向が不規則になって起こる睫毛内反と、乳幼児のまぶたの内側に起こる睫毛内反と2種類あります。乳幼児の睫毛内反は自然に治ることが多いのですが、7歳を超えても治らない場合には、視力障害を起こすことがありますので手術を検討します。その場合、提携している高度医療機関にご紹介いたします。
眼瞼内反
加齢とともにまぶたを支えている筋肉や靱帯が緩み、まばたきをするたびにまぶたが内側に向いてしまいます。症状がひどい場合には手術を検討します。手術をご希望になる場合には、提携している高度医療機関にご紹介いたします。
斜視
ものを見る時に、片方の目が正面を向き、もう片方は違う方を向いている状態です。
斜視は、方向によって主に4種類に分けられます。内側を向く内斜視、外側を向く外斜視、上側を向く上斜視、下側を向く下斜視です。他に、眼が回転する回旋斜視があります。
内斜視
どちらかの目が内側を向いている斜視です。
乳幼児の偽内斜視は一見寄り目に見えますが、実際には斜視ではありません。乳幼児期は、内側の白目がほとんど見えず斜視のように見える場合があります。成長すると寄り目にみえなくなります。気になるようでしたら眼科受診をお勧めします。
調節性内斜視は、遠視が原因で起こり、眼鏡による矯正を必要とします。経過により手術を行う場合もあります。
乳児内斜視は生後6か月以内にみられ、早期に手術を必要とする場合があります。
外斜視
どちらかの目が外側を向いている斜視です。
常に外側を向いている恒常性外斜視と、時々外側を向いている間欠性外斜視があります。間欠性外斜視は、遠くを見たときやぼんやりしている時に眼が外側に外れる斜視です。経過観察で良いことが多いですが、両眼でものを見る機能が悪くなる場合には手術が必要となることがあります。恒常性外斜視は整容的に手術を行う場合もあります。
上下斜視
どちらかの目が上か下に寄っている斜視です。目を上下に動かす筋肉のバランスが崩れたり、麻痺を起こしているために起こることがあります。脳神経疾患の場合もありますので、精密検査が必要となります。
斜視の治療
斜視は状態や年齢によって治療方法が異なります。手術が必要な場合もあります。必要に応じて提携している高度医療機関の斜視弱視専門外来をご紹介いたします。
弱視
視力は誕生後にものを見ながら発達していきます。生まれたばかりの赤ちゃんは明るさがわかる程度の視力しかありません。外界からの様々な視覚刺激を受けて、視覚に関わる神経回路が発達していき、徐々に視力が発達します。普通、6歳くらいまでに視力は1.0以上となります。この視力の発達期に眼瞼下垂や斜視、屈折異常(遠視、乱視、近視)などにより、視力の発達が障害されると、弱視になることがあります。弱視とは、眼鏡などで矯正しても十分な視力を得られない状態をいいます。乳幼児期の病気で眼帯をしたために弱視になることもあります。子どもの視力の発達に大切な3歳くらいまでは、数日間という短期間の眼帯着用でも弱視になる可能性があります。
弱視の治療
弱視は早い時期に適切な治療を受ければ改善する可能性があります。早く開始するほど高い治療効果が期待できます。屈折異常がある場合、眼鏡でしっかり矯正し、視力の発達を促します。眼鏡による矯正では効果が上がらない場合には、視力の発達を促すために遮蔽訓練(しゃへいくんれん)を行います。これは視力のいい方の目にアイパッチ(眼帯)を付けて遮蔽し、視力の弱い方の目だけで物を見る訓練です。遮蔽法はご家庭での訓練が重要ですので、保護者の方がしっかりサポートする必要があります。必要に応じて提携している高度医療機関の斜視弱視専門外来をご紹介いたします。
屈折異常
眼に入ってきた光は網膜という神経にピントを結び、それが視神経を通じて脳に伝わります。網膜にピントが合わないと像がぼやけます。これが屈折異常で、眼鏡やコンタクトによる矯正が必要になります。
屈折異常には、近視、遠視、乱視があります。屈折異常がない状態は正視と呼ばれます。
近視
網膜より前方で焦点が結ばれる状態です。眼球の長さ(眼軸)が長いと、近視になります。近い距離にあるものはよく見えますが、遠い距離のものが見えにくい状態です。
遠視
網膜より後方で焦点が結ばれる状態です。遠視が強いと遠くも近くもぼやけて見えます。眼軸が短いと遠視になります。遠距離と近距離の両方で調節が必要であり、特に近距離では強い調節を要するため、疲れ目を生じやすくなります。
乱視
角膜や水晶体のゆがみにより、焦点を結ぶ位置がずれ二重に見えたりします。大部分の乱視はめがねやコンタクトレンズで矯正できますが、角膜の病気などで生じた不正乱視は矯正が困難です。遠くも近くも焦点が結ばない状態です。だぶり、にじみ、ゆがみといった見え方の異常を生じます。
老眼
眼は近くを見るときには調節力でピントを合わせています。40歳ころから調節力が弱まり、近くのものが見えにくい、手元を見てから遠くを見るとぼやけるなどの症状が出ます。これが老眼です。加齢によるもので、視力に問題がない人、近視、遠視、誰でもなります。いつごろ始まって、どのように進行するかは、個人差が大きいです。遠視の方は、老眼の症状をより早く自覚することが多く、近視の方はもともと近くに焦点が合いやすいため、老眼の症状を自覚しにくいと言えます。ただ近視の方も、眼鏡を使用したままでは近くのものが、ぼやけるなどの症状が出現します。対応としては遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズを使用します。老眼は眼精疲労の原因にもなります。老眼かなと思ったら眼科で検査を受けましょう。
スマホ老眼
スマートフォンが普及してから、「夕方になると目がかすむ」「細かい文字が見えにくい」といった症状を訴える若い方が増えており、『スマホ老眼』と呼ばれています。スマートフォンなど手元の画面を集中して見続けることで、眼のピント調節がうまくできなくなって起こります。一時的な症状で、十分に休息や睡眠をとれば解消することが多いのですが、悪化すると休んでも回復しなくなって頭痛や吐き気などの症状を起こすこともあります。予防として、40cm以上離してスマホを使用する、1時間以上連続してスマホを使用しない、スマホ使用中は意識してまばたきをするよう心がけましょう。
眼鏡処方
屈折異常は日常生活にさまざまな支障を生じます。近年、パソコンやスマートフォンの普及により、眼を酷使してトラブルになるケースが増えています。眼鏡をかけると近視がすすむ、視力が悪くなると思われる方がいらっしゃいますが、その様な事はありません。視力が下がってきているにもかかわらず眼鏡を装用しないでいると、目を細めて物を見るくせがつき、目つきが悪くなったりします。合ってない眼鏡を装用することも問題を生じます。適切な眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が大切です。眼科で眼鏡やコンタクトレンズの処方を受けましょう。視力に不安があったらお気軽にご相談ください。
子供の近視
仮性近視
長時間近くのものを注視すると近視になりやすくなります。近視は最初、一時的に目がかすむ状態として現れ、休息や睡眠によって回復します。これは仮性近視の始まりです。仮性近視を放置すると近視に進行してしまいますので、適切な対応が必要です。まず、近視に進行させないためには生活習慣を改善する必要があります。悪い姿勢での読書、スマートフォンやタブレットの長時間使用、近い距離での長時間のテレビ鑑賞などには注意が必要です。
仮性近視の治療には、点眼薬を用います。調節麻痺剤の点眼薬により、ピント調節している筋肉の緊張をほぐして、遠くを見ているような状態にします。点眼治療中は、近くのものが見えづらくなるので、就寝前の点眼をお勧めしています。
眼鏡をかける時期
子どもの場合、教室の1番後ろの席から黒板の文字を見るためには0.7、1番前からでも0.3以上の視力が必要だとされています。つまり0.3以下の場合には眼鏡が必要です。0.7~0.3の視力なら、前の席にしてもらうか眼鏡で矯正する必要があります。0.7~1.0の場合、必要に応じて眼鏡を作成します。見えにくいままでいると、眼に負担がかかり近視が進行しやすくなります。眼鏡あわせの際には、装用テストをした上で最適な眼鏡を処方しています。視力に不安があったら早めに眼科を受診しましょう。
子供のコンタクトレンズについて
コンタクトレンズは高度管理医療機器であり衛生的に取り扱う必要があります。そのため、小学生以下は眼鏡の方が安全と言えます。
コンタクトレンズは、ハードレンズ、ソフトレンズ、使い捨てソフトレンズなどがありますが、目の状態や使用する環境などに合わせて選択することが重要です。眼科で診察を受けて眼の状態や環境に合わせたものを使うようにしましょう。
コンタクトレンズは常に使い続けるのではなく、定期的に外して眼を休ませることも重要です。そのためには予め眼鏡を作っておき、コンタクトレンズを外した時に眼鏡を装用し、目を休ませるようにしましょう。
近視進行予防のために
- 1日に2時間は外で遊ぶようにしましょう。
太陽光に含まれる短波長の可視光であるバイオレットライト(紫色光)が近視進行抑制遺伝子の発現を活性化させ、近視進行抑制に効果があるとされています。学校の休み時間はできるだけ外で遊びましょう。日陰でも一定の効果はあります。 - 読書は背筋を伸ばし、30cm以上離して読みましょう。
- 読書,スマホ,ゲーム等は1時間毎に10分は休みましょう。
- ゲームはスマホよりテレビの大画面でやりましょう。
- 定期的に視力検査を受けましょう。
色覚多様性
「見る」ことは、視力・視野・色覚によって成り立っていますが、正常とされる方とは色が異なって見える状態が色覚多様性です。以前は色覚異常と呼ばれていましたが、2017年に日本遺伝学会が「色覚多様性」と名称を改めています。 先天的なものと後天的なものがあり、先天的な色覚多様性は日本人男性の20人に1人(5%)、日本人女性の500人に1人(0.2%)とされています。先天性のものは赤と緑の区別がつきにくい場合が多く見られます。検査で程度の判定は行いますが、治療はありません。色の見え方はほかの人とは異なりますが、視力に影響はありません。色の間違いやすさには個人差があります。日常生活に全く支障のない場合や自覚していない場合も多くみられます。色による判断が強いられる場面などでは、判断が難しく失敗する恐れもありますし、気付かずに事故に遭うリスクもあります。進路を決める際に判明して職業選択の幅が狭まってしまう場合もあります。進学、就職に関しては、現在では色覚について問われることはほとんどなくなっていますが、自衛官、警察官、消防士、航空、鉄道関係の職業では就労が制限されることがありますので、注意が必要です。色間違いを避けるためには、まず、自分が間違えやすい色がどんな色かを知る必要があります。そして、物の形や特徴をよく見て色だけで判断しないようにします。これを生活の中で習慣化することで色間違いを減らせるようになります。色覚に不安があったらまずは検査を受けてみましょう。
角膜炎
黒目の部分を角膜と呼びます。角膜は、眼の中央にある直径11mmくらいの円形の透明な組織で、血管はありません。角膜に傷ができ炎症を起こすのが角膜炎です。角膜炎の原因は、異物、植物(枝や葉)が眼に当たることによる外傷、コンタクトレンズの不適切な使用、ドライアイ、細菌、ウイルス、カビなどの感染症などがあげられます。角膜は、透明で強い屈折力を持ち、物を見るための重要な役目を持っています。角膜炎が原因で角膜が濁ったり、いびつになったりすると視力が低下します。
角膜感染症を引き起こす病原体には細菌、真菌(カビ)、ウイルス、アカントアメーバなどがあります。重症化すると視力障害が残るケースもあります。痛み、充血、涙が出る、眩しく感じるなどの症状がある場合は、放置せず速やかに眼科を受診しましょう。角膜感染症の原因で最も多いのは、コンタクトレンズの長時間装用、連続装用、不衛生な使用です。また、ドライアイの方がコンタクトレンズを装用している場合、角膜感染症のリスクは上がります。ドライアイの方は慎重にコンタクトレンズを装用しましょう。角膜炎にならないためには、レンズのケアをきちんと行い、レンズを触る前に必ず手を洗うことも大切です。眼に違和感があればコンタクトレンズは中止して早めに眼科で診察を受けましょう。
強膜炎
強膜炎とは、白目に炎症が生じている状態を指します。原因不明の場合が多いですが、慢性関節リウマチや全身の疾患に合併して起こることもあります。症状は、強い充血、痛みですが、視力低下を伴う場合もあります。軽症の強膜炎は、ステロイド点眼で治療が有効です。重症の強膜炎では、ステロイド等の全身投与が必要となる場合があります。全身的な検査や治療が必要な場合は、提携する高度医療機関へご紹介させていただきます。
ぶどう膜炎
虹彩(茶目)、毛様体、脈絡膜を総称してぶどう膜と呼びます。そこに炎症を生じる病気がぶどう膜炎です。
ぶどう膜炎の症状
ぶどう膜炎が生じると、前房と硝子体という透明な液体部分に炎症細胞が出て、霧視(かすみがかかったように見えること)、飛蚊症(虫、透明な糸、アメーバのようなものが飛んで見えること)、羞明感(まぶしく感じること)、視力低下、眼痛、充血など様々な症状がみられます。片眼だけの場合と両眼の場合とあります。程度も経過も様々です。強い炎症や、再発を繰り返す場合は、大きな神経障害を起こす可能性もあります。合併症として白内障、緑内障、硝子体混濁、網膜剥離、黄斑浮腫などを生じることもあります。
ぶどう膜炎の原因
ぶどう膜炎の原因は多岐にわたります。日本では、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病という3つの病気が代表的です。サルコイドーシスは、肉芽腫と呼ばれる腫瘤が全身各種臓器に形成される病気です。肉芽腫は目、肺、心臓、皮膚などに生じます。原田病は、メラニン色素を産生するメラノサイトという細胞に慢性的な炎症が生じる自己免疫疾患です。皮膚に白斑を生じたり、聴覚障害を起こしたりすることもあります。ベーチェット病は、眼症状の他に皮膚症状、口内炎、陰部潰瘍を起こす病気です。細菌、ウイルス、その他の感染、外傷、免疫異常、悪性腫瘍など様々な原因がありますが、ぶどう膜炎の1/3は原因不明とされています。
ぶどう膜炎の治療
原因が感染による場合は、その病原体に対する治療が行われます。その他、ステロイド薬や散瞳薬の点眼、炎症が強い場合には眼への注射、更に重症な場合は、全身にステロイド薬、免疫抑制薬、生物学的製剤の投与(点滴注射)が行われます。症状がよくなっても再発の可能性がありますので、自己判断で投薬を中止しないことが大切です。ぶどう膜炎は、定期的な通院と、治療が必要です。
全身的な検査や治療が必要な場合は、提携する高度医療機関へご紹介させていただきます。
網膜の病気
網膜は見るための神経で、検診などで指摘される眼底とは網膜をさしています。
その異常は視力低下に直結します。
網膜剥離
網膜剥離は、網膜が眼球の内壁から剥がれることで起きる病気です。
網膜は外からの光を感じ取って視覚情報に変換し、それを脳に送る役割を持つ組織です。網膜は剥がれると機能が低下し、視野欠損や視力低下といった障害が発生し、さらに放置すれば失明に至ることもあります。症状が進行するほど治療も困難になるため、網膜剥離は早期発見と早期治療が重要な病気とされています。症状として飛蚊症(虫、透明な糸、アメーバのようなものが飛んで見える)や光視症(キラキラと光が見えるように感じる)を自覚することがありますが、無症状のこともあります。病状が進んでくると視野欠損(カーテンや幕がかかっているように見える)や視力低下が生じます。
網膜剥離の原因
眼球内は硝子体という透明な液体で満たされていますが、これが網膜にできた穴(裂孔)から網膜の裏側が入り込んでしまい、網膜がはがれて網膜剥離になります。裂孔は加齢による硝子 体の変化のためにできたり、外傷が原因の場合、強度の近視による網膜の萎縮が原因の場合などがあります。他、糖尿病網膜症で起きる場合もあります。
網膜剥離の治療
網膜に穴があいているだけで、剥離していなければ光凝固(レーザー)による治療が行われます。レーザー治療をしても網膜剥離に至ってしまうこともあります。網膜剥離に至ってしまった場合は、手術が必要になります。
必要に応じて提携する高度医療機関へご紹介させていただきます。
中心性漿液性網脈絡膜症
中心性漿液(しょうえき)性網脈絡膜症では、網膜の中心にある黄斑部に網膜剥離が発生します。黄斑部とは網膜の中心・直径約1.5mmの範囲を言い、物を見るにあたって一番重要な部分です。網膜に隣接する脈絡膜から液体成分が漏れ出し、黄斑部に溜まって網膜剥離を起こします。この病気は、30~50代の働き盛りの男性の片眼に発症する場合が多く、睡眠不足や過労などストレスが関連していると言われておりますが、はっきりとした原因はわかっていません。ステロイド薬の副作用や妊娠期の女性に発症することもあります。
治療として循環改善薬やビタミン剤等の内服を処方する場合は多いですが、2~3ヶ月で自然治癒することも珍しくありません。症状は、視力の低下や、ものが歪んで見える(変視症)、視野の中心が暗く見える(中心暗点)、ものが小さく見える(小視症)などがあります。網膜剥離が治ると、症状が軽快します。早期の治癒のために睡眠不足や過労などのストレスをためないように心がけましょう。再発が多く、回復が思わしくない場合は、レーザー治療を検討することがあります。その場合は提携する高度医療機関へご紹介させていただきます。
飛蚊症
虫、透明な糸、アメーバのようなものが飛んで見える症状です。形や大きさはさまざまで、視線を動かすと一緒に動く場合や、ゆっくり下に落ちていくように感じられることもあります。青空などを見て気づく場合もあります。問題のないケースも多いのですが、重大な病気の症状として現れる場合もあるため注意が必要です。飛蚊症には、加齢など生理的な変化によって起こる生理的飛蚊症と、病気によって起こる病的飛蚊症があります。
- 生理的飛蚊症は、硝子体という眼内の透明な液体が加齢などで変化して中に濁りを生じ、その濁りの影が網膜に映って見えている状態で治療の必要はありません。
- 病的飛蚊症は、網膜剥離、網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、ぶどう膜炎など、視力の低下や失明につながる病気が原因です。早期の治療が必要になります。
飛蚊症になったら眼科を受診しましょう
ほとんどの飛蚊症は生理的ですが、病的飛蚊症での視力低下や病気の進行を防ぐためには、飛蚊症が現れた時点ですぐに眼科を受診することが重要です。特に、黒い点の量や範囲が急激に増えた、暗い場所で稲妻のような光が突然見える、急に視力が低下した、視野の一部が欠けたなどの症状を伴う時は手術が必要となる場合もありますので、できるだけ早く受診してください。